昭和４５年６月２３日　朝の御理解


御理解　第五十四節　「徳のないうちは心配する。神徳を受ければ心配はない」


　心配のない、不安のない生活、これが信心をさせて頂く者の最高の願いでなからねばなりません。それに一歩一歩近づかせて頂くという信心、それを私は本当の信心と思います。おかげを頂く為に信心しておるというのではなくて、心配がなくなっていく、だからそれを言い替えますと、いわゆる安心の生活が出来るという事です。信心の究極の使命と云うか、宗教はもう全て、そこのところを教え又は与えていくものだと思う。心配のない生活、安心して・・・・・
  そこで、そんなら私は　ひとつも心配はないと云う人があります。けれども今心配がないから、それで神徳を受けたかというとそうではない。いつでも、どんな場合でも心配のないというものでなからなければならんのですから、どのような事に出くわしましても、それを心配せんで済むおかげなれですから・・・
  そこで心配がないと云う事は、どういう事かと云うと心配の代わりに喜びがある、と云う事です。只、いっちょん心配しよらんと云うのではね、だからまだ、はっきりしたものではないのです。ですから、どうでも信心を頂いていかなければ心配はないと云うおかげは受けられない事が分かります。
  平穏無事、お金もある、物もある、健康であるといったような人達もたくさんあります。《けど》その人達が神徳を受けとるかと云うとそうではない。安心はしておっても喜びがない。だから心配せんで済んでおると云う事、その裏ずけになるもの、まあ、喜びです。いわゆる信心の喜びです。いわゆる真に有り難いなぁと思わせて頂ける心なのです。その有り難いと思う心がいよいよ神徳を受けていく、いわゆる御神徳というのは、もう、限りがないのですから、いわゆる修徳ですねぇ、徳を修めていく、そういう事になるのです。
  私共が、例えば信心頂いておりましても、信心頂いておるおかげで安心しておられると、お取次を頂いてお願いをしたから安心したと、お取次を頂いたらもう心配はいりませんよと、なる程、それもおかげ頂くと云う事に於いては、非常に有り難い心ですねぇ。心が平生になりますから、平生な心に、いわゆるおかげが宿るのです。波風が立たない水面に影が映るようなもの、おかげを頂くと云う事に於いてはですね、そういうお取次を頂いてお願いをいたら安心がいったと、心配がなくなったという・・・・・
  けどもここで、今日、神徳を受ければ心配はないというのは、お取次を頂いたから心配が消えたという程度の事ではない、これは裏ずけとして信心の喜びというものがなからなければならん。だから、これはもうおかげではなくて、お徳を受けていく心の状態、おかげを受けていく受け物、心配がない代わりに喜びがある。そのようにして神徳というものは、いわゆる修徳されていく、一段一段徳が進んでいく訳であります。
  そこで私共がですねぇ、そういう心配がないだけでなくて、喜びがそれに裏ずけとして頂けるような信心、そういう信心を頂いて行きたいという願いを持たなければならない。
  そこで、第五十三節「信心すれば、目に見えるおかげより目にみえぬおかげが多い。知ったおかげより知らぬおかげが多いぞ。後で考えて、あれもおかげであった、これもおかげであったということがわかるようになる。そうなれば本当の信者じゃ。」
  これは、今、私が申しました事をずーっと具体的に教えておられる訳です。一番初めに、「信心すれば」と信心をしておればですよ、信心がないという人には
だから当てはまらない訳です。信心をしておれば目に見えるおかげより目に見えぬおかげが多いんだと・・・それは、もう本当に分かりだしたら驚くばかり、もう十重、二十重にね、私共はおかげの中にある事を実感する事があります。まあ
そのような事にまで、神様の働きを頂いておるのかと思う位、いや、それでもまだまだ分かり足りない、目に見えないおかげ、いわゆる氷山の一角に、といった
ような事を申しますが、私共がおかげと思うておるのは、ほんな氷山の一角であって、そのおかげ根というのはどれだけあるやらわからん。これは信心をすれば、
それが段々わかるようになる。そこが有り難い。
  いわゆる、そんなら形の上に於いてはおかげではないかのように見えておるけれども、やはり神様の御都合の事であろうというようなですねえ、そういう思い方に、又、そういう頂き方がね、素直に出来てくるようになる。
  神様の御都合に違いない。どういう御都合かはわからん。例えば泥棒に入られたと、信心しよればとおっしゃるから、信心させて頂いておって泥棒におうたという・・・そこで、これは実感としてです、神様の御都合に違いはない、と実感出来る。勿論、神様の御都合という事は、よりおかげを下さろうとする神様の御都合である、という事がね、段々それが本当に信じれれるようになる。信心ちゃ
それが有り難い、信心しよってどうしてこんな事が起こったじゃろうかというような受け方ではなくて、信心しておって起きてきた事であるから、深い深い神様の御都合であろうと、いわゆる目に見えないところのおかげの深さというものを何とはなしに、おぼろげながらでもそれを信じれれるようになる。その辺も、これは信心を続けていっておる者でないと分からない事だと思いますね。
  「後で考えて、あれもおかげであった、これもおかげであったと分かるようになる。」ですから、そこにはねあれもおかげ、あれとは過去の事。あんな事があったが、あの時は本当に悲しい思いをしたが、あの時に腹が立ったが、後で考えてみたらあれがおかげじゃったなと分かるようになる。
  してみると、腹を立てたり悲しんだりする事はねひとつもいらんのだというようなところに迄、その心は進んでいくのです。今ここに腹の立つような問題が起きておる、けれどもこれがおかげであるという事が段々分かってくるのですからそれが繰り返し繰り返し稽古をさせて頂いておるうちに、その腹の立つような問題が、有り難いとお礼が言えれるように段々なってくる。
  これもおかげ、これというのは現実の問題。今例えば難儀をしておる、今困っておる問題がある、それもやはりおかげだと、云うならばそれも神愛だと、それは苦しい事であっても、それは神様の云うなら愛の表現に他ならないと云う訳です。そういうような事がね分かるようになると、本当の信者じゃと、だから私共は、そういう本当の信者を目指しての信心・・・
  そうすると五十四節「徳のない間は心配する。神徳を受ければ心配はない。」
という、徳のない間は心配しておったが段々そういう稽古を修練させてもろうて、
いわゆる修徳のおかげを頂いていきよるうちにです、あれもおかげである、これもおかげであると分からしてもらうところに、心配はない、だけではなくて、それがおかげと感じられるというところにです、喜びがとものうてくる。
  これは私の事なんですけれども、高等小学校を出ましたのが十五です。そして
すぐ酒屋の小僧に参りました。その頃からハッキリ言える事は、もう絶対、神様
を拝む事を続けてきたという事です。もう拝み止めた事がない。
  私は、久留米の庄島、私の行ったお店。庄島から櫛原の教会に毎日、日参をさせて頂いた事です。やはり、ひとつの大きな変わり目ですから、いわゆる他人の飯を食うと云うか、しかも、ここに大きな願いを持っておる、私も大きな酒屋になろうと思うとる。
  ですから、給料が安いとか高いとか、といったような事ではなくて、とにかく
信用のあるお店で、酒に大変詳しいご主人のおられるというところを選んで、やらして頂いたんです。ですから、只、給料もらうというだけならね、どこだって
少しでも給料の高い所がいいのだけれども、とにかく酒屋という酒をさしてもらう、商売を会得しなければならない、他の番頭とは少し意味が違う、やはり修行。
それには、やはり子供の時から拝ませられておる、又はおかげを見せて頂いたり
聞かせて頂いたりしておる、結局、金光様が対象になった訳です。いわゆる神様
に、お縋りしてどうしても成功させてもらおうという、やはり願いがありますから、いわゆる一心発起したんですねえ、まあ、十五位の少年時代。そして、お店
を七時に開けなければなりませんから、七時までには帰ってこなければいけません。五時位からお参りして御祈念をして帰ってくる、そしてからお店を開けるという訳です。ですからこれだけはね、もう続けられた。いわゆる神様を拝むという事、御祈念をするという事。勿論、御祈念をしたから、お参りをしたから有り難かったとか何とかいうようなものは、まあ、ひとつもなかったように感じる。
時々は、これが有り難いのだろうかと感じない事もなかったけれども、それが続けられてきたという事。
  昨夜、田主丸のむつやの謝恩祭でした。謝恩祭をさせて頂きますのに当たって
出かけにお礼お願いをさせて頂いておりましたら、頂いた事が、『きれいなお掃除の行き届いた床の間に軸がかかっておって、その軸の前に香炉の台があって、
香炉がひとつ置いてあるという何とも言えん、品の良いお座敷のたたずまい。』
そういう所を御心眼に頂いた。そしたら、次に今度は、『その香炉のふたをとって、香をたいておる所』を頂いた。次には、『その香の横になんともいえん、きれいな花がスキッとしたふうに生け上げてある所』を頂いた。例えて云うと、これはお座敷に軸がかかっておって、香炉がひとつキリッとした位置に置いてあるという、それだけでもお座敷の雰囲気は立派ですよね。それだけでも何にもいらんという感じがします。けれどもそれに、例えば香がたいてあるならば、これは
なお、有り難い事です。いつお客さんが来ても何とはなしに奥ゆかしい香りが部屋いっぱいに漂っておるという事は有り難い。それにもまして、又、その横には
いわゆる瑞々しい花が生けてあるとするならば、もうどういうお客さんをいつ迎えてもいいという感じが致します。そういう情景を頂いて、いわゆる私共の信心のひとつの進め方というか、信心のあり方というか、私が今日申しております、私が十五の年から神様を拝むという事を続けぬいてきたという事は、それは、それに喜びがあるとか、御利益を別に感じもしなかったけれども、とにかく、やっぱり一心発起したという事は、それが続けられた事ですから、ちょうど軸の前に香炉が置いてあるようなもんじゃないでしょうか。云うなら形だけの事が出来たという事。それだけでも、しかし素晴らしい。それが時々です、自分の心の中に
それこそ香をたいておるような信心ちゃ有り難いもんだなあ、といったようなものをです、確かに時折は感じたに違いない、でなかったらあれほど続けられるもんじゃない。
  これは神様のおかげと思うような時には、それこそ、信心の喜びというか、たまにはそこに花のひとつも入れてあるような状態の時もあっただろう、やはりいろいろの時があっただろう。私は思いますのに、信心というものは、とにかくどのような形でもよいから、やはり有り難かっても有り難くなくても、云うならおかげを受けても受けなくても、続けられるという事がみそだと思います。
  例えば、御理解を自分の都合のよか時やらは、有り難か時だけは一生懸命御祈念をするけれども、もう今日は拝もうごともない、といったような事ではいけない。これはもう、無味乾燥、何の感激もなからなければ喜びもない、いや、むしろ心は暗い寂しい、どんな時でもいいけれどもやはり、そんなら時間がきたら夜なら夜の御祈念に自分の所の御神前に座って、いわゆる御祈念を捧げるといった
ような事がね、続けられていくうちにです、いわゆる本当の信心に触れる事が出来るように思います。
  いわゆる徳を修めていく修練、稽古というものがそのようになされていく、そうしていくうちにです、これはもう理屈ではありません。どんな場合でも神様の御都合と頂けるような、いわば心の状態というものが、段々、的確なものになってきて、いわゆる心配をせんで済むおかげ・・・
  これはまあ、現在の私の御祈念ですけれども、もう御祈念は私と神との、云うならば交流の場だと思うとります。そのようにありますから、有り難くない事が
ない。いつでも御神前に座ったが最後、神様との交流が・・・だから、そういう
気持ちを一日持ち続けさせて頂きたいと思うけれども、なかなかそれが出来ませんけれども、そこんところが今、私の修練させて頂いておるところなんです。折角、信心をさせて頂くなら、ひとつ本当の信者を目指させて頂こう。そういう風にね、例えば、一心発起して信心の事が願われる、そしてそんなら何十年という私の信心を振り返ってみて、なる程、一心発起して一生懸命それを続けてきたが
思うてみると、続けさせられておったという事が結論されます。自分が一生懸命
参ったり拝んだりしたのじゃなかった、参らせられておった拝ませられておった
という事でございますから、そういう心がです、信心させて頂いて初めて分からせてもらう信心の喜び。
  昨日ある方がお参りをしてまいりまして、丁度、三年前にここの御造営が始まると同時に、御造営資金としてのお供えをしたいという一心発起をされた。私もまあ、あのような状態の中によう月々これだけの事が出来られるなあと思われる位に出来ておられた。昨日お参りをしてみえられて、その三年間の丁度満がんに
なったと、おかげを頂いたというお礼のお届けがありましたが、後で言われますのに、「振り返ってみて三年間ようもこのだけの事が出来たと思う。それだけの事をしたからというて別にくぼんだ訳でもなし、けれども、ようこれだけの事が
やり続けられた、結局思うてみると神様にさせて頂いておった、という事が分かる。」と云うておられます。
  昨日その事を、私はむつやの宅祭の時も申させて頂きました。お祭りを仕えるといやぁやっぱり相当のお金もかかる事でありますし、又、時間も随分費やします事ですけれどもです、それが一生懸命の、例えば思いで奉仕すれば奉仕する程
です、自分がお祭りをしたのじゃない、させて頂いておったのだなと、もう万事万端に御都合、お繰り合わせを頂いておるのに驚く位です。ですから、それが例えば、御造営だけの事ではない、お宅祭を仕えるというだけでない、そういう真心というか一心発起した事がです、日々の信心生活の上にも、例えば今日一日、本気で御教に取り組ませて頂いて、それへ一生懸命取り組んでいけばいく程、例えば夜なら夜の御祈念をさせて頂きます時に、ようも今日はああ云うところを通りぬかせて頂いたと神様にお礼を申しあげねばおられない程しの有り難い一日である事に、気付かせて頂くだろう。結局、自分が一日一生懸命それに取り組んだと思うておるけれども、一日を締めくくってみてです、神様にさせて頂いておったという実感が生き生きとして頂けてくる、そういう喜びが蓄積される。
  「信心は自分ですると思うな、神がさす」とおっしゃる。神様がさしてくださるな、という事をです、一生懸命取り組んでみて初めて分かるのです。それが取り組んでなかったら、それはやっぱり自分がした事になるでしょうね。
  例えばそんなら三年間の間に、相当の金額のお供えをしたらそれだけコロッと減った事になるでしょう。そんな馬鹿らしい事は止めにゃいけません。一生懸命の思いがそれをなさせて頂く時にです、自分で出来たのじゃない神様がさせて下さったんだなあという、そこで生まれてくるのは、自分にもこれだけの事が出来るという信念というか、力というものが頂けてくる。信心生活というのは、そういうような事だと私は思います。そういうような願いというものがひとつの基礎になっての信心。
  段々信心を続けていくうちに、心配というものがなくなっていくだけではなくて、心配のかわりに喜びが頂けてくる。そしてあれもおかげである、これもおかげであると分からして頂くようになる。そういう信心の喜びがです、神様への神恩報謝という形になってくる。そこに生きがいが感じられるようになる。それが私共の、いよいよ信心させて頂く者の願いでなからなければならない。信心の喜びが、そのまま神様のお喜び頂けるような信心生活が出来る。それに例えば、命がかけられるというか、それに私共の生きがいが感じられる、そういう信心に段々ならして頂く事が、私は本当の信者を目指した者の信心だと思います。
  そういう生き方に御神徳は、いよいよ頂ける。いわゆる御神徳とは、神様の御信用とおっしゃるから、神様の御信用がいよいよついていく、そこにいわば神徳を受ければ心配はないと、いわゆる安心のおかげ、又はね大安心のおかげが約束される。信心の究極のところは、私共が、いわゆる宗教の使命というものは、そういう素晴らしい境地を私共に分からして下さろうとするところにあるのです。  目先目先に頂かなければならないおかげというのは、そういう信心を進めていく為の、云うなら神様の御演出とでも申しましょうか、本当のところへ導いていく事の為の云うならば、「はえば立て、立てば歩めの親心」というように、お日銀を与えてでも、一歩でも歩かせようとする親心がね、そのような形をとってくる訳なんです。
  今日は、大変難しい風に申しましたが、『徳のない間は心配する、神徳を受ければ心配はない』と、その心配はないという心配の裏ずけになるものは、信心の喜びでなからなければならん。只、心配はない、と言っておるだけのものであるならば、それはまだ、本当のものではない。心配のないという裏ずけには喜びの必ず伴うておる、それが神徳も受けていっておる事であり、修徳をしていっておる姿だといったような事を申しましたですね。どうぞ。